前回は「つめた〜い=青色」「あたたか〜い=赤色」という自動販売機で使われている2種類の色の意味を少し探っていきましたが、今回は色ごとに色と情報の関係を探っていきます。まずは多くの場所で使われている黄色の持つ意味から考えていきましょう。
多く見かける黄色といえば道路にある信号や標識でしょう。黄色信号は注意や警戒を意味し、黄色い標識はカーブや幅員の減少、学校近くであることを伝える「警戒標識」に分類されます。車で走っている人たちに伝えることが多い道路標識の中でも重要度の高い警戒標識では、青や赤と比べて周りよりも目立ち、そして視覚的にも目に飛びこんでくるような強い効果のある(=膨張色)黄色が採用されているのでしょう。目立たない色では警戒しなければならないことを伝えづらくなってしまいます。
もう一つ多く見かける黄色といえば駅や公共施設の出口に一貫して使われる黄色ではないでしょうか。ここには警戒という意図はありませんが、道路標識の場合と同じく「目立つのが黄色であった」という理由が大きいのではないでしょうか。例えば私たちが駅を降りた後に行う行動は、多くの場合駅から出ることです。多くの人たちにとっての目的を構内で目立つ黄色で案内することは妥当であると言えますし、「出口=黄色」という印象を強く残すことによってどんな場所であっても遠くから看板を見たとしても、出口の方向が分かります。
一方で自然の黄色の印象も考えてみましょう。夏を代表する花でもあるひまわりの黄色は「元気さ」「活発さ」といったように、目立つと同時に明るい印象を持つ色であることもわかります。
これらのことから人間の目にとって黄色は明るい印象を持ちつつ、警戒や注意にも使えるような強さのある色であると考えることができるでしょう。
黄色の持つ意味を考えてみると、警戒標識や注意のデザインに黄色が使われたり、広告などで目立たせるときに黄色を使う理由がなんとなく見えてきます。さて、次は黄色ではない色についても考えていきましょう。
黄色と同様に緑色もまた、私たちには身近な色です。あなたの周りの緑色を使った情報、少し探してみるといっぱい見つかると思います。
非常口マーク、農業協同組合(JA)ロゴマーク、新緑と3つの緑色を集めてみました。どれも緑の印象が強いものですね。皆さんはこの3つを見てどんな印象を持ちましたか?
非常口のロゴは「安全, 安心」、JAのロゴマークは「安心, 自然」、新緑は「リラックスできる」といったような印象を持つ方が多くいらっしゃると思います。まさに緑色の持つ意味はここにあるようなもので、「安全, 安心, 自然, リラックス」のようなものであると言われています。緑色の情報は「安全, 安心」という視点では、私たちが安全や安心を得るための施設(病院や避難施設など)への誘導案内に使われていたり、「自然」という視点では生野菜を使うことで有名なモスバーガーのロゴの利用が緑色を用いた情報のデザインの代表例とも言えるでしょう。
また、緑色は自然な色ということで親しみが湧きやすい色であるともされています。あくまで印象の話でしかありませんが、何気ないものに緑色のものが多く存在していたり、私たちがなんとなく緑色の物を買ってしまうのは、親しみやすい印象があるからなのかもしれません。
黄色、緑色と来て、最後に赤色の持つ意味を探っていきましょう。
赤色は道路でよく見る進入禁止マーク、メガホン(応援)、パトカーの赤色灯の3つを集めてみました。写真を見ると赤色が際立って目立っていることがわかります。
まずは標識の赤から見ていきましょう。写真の進入禁止をはじめ、一時停止や各種制限など必ず守らなければならない標識に対して赤色は使われています。これらのことをまとめて「規制標識」と呼ぶのですが、これらは守らなければ様々な事故につながってしまうために、情報が確実に、そして速度が出ている車の中にいる人に対して伝わらなければなりません。
そんな重要な標識で赤色が使われている理由は、赤色は黄色と同じく私たちの視覚に強烈な印象を残す膨張色のひとつであり、そして私たちにとって赤色は「重要なものである」という印象が強いからであると考えられます。恥ずかしさをより強めた「赤っ恥」という言葉もあるように、赤色は私たちにとって非常にインパクトのある色なんですね。ちなみに、緊急性の高い業務に利用されるパトカーの赤色灯や消防車のデザインも同じ理由で赤色が使われているのもこの理由ではないかと考えられます。
一方でメガホン(応援)で使われる赤色は「情熱」「エネルギッシュ」を意味するものでしょう。プロスポーツではチームカラーがあることが多い故に全体的に使われているわけではないですが、私たちは「情熱 → 炎 → 赤系色」と連想ゲームの要領で情熱やエネルギッシュさを赤色で連想してしまうことが多くあります。
他にも赤色は様々な意味を持つ色で、ソビエト連邦の国旗のように共産主義, 社会主義を象徴する色としてであったり、赤と白を組み合わせた紅白の組み合わせで様々な祝い事を意味することもありますが、一旦ここで赤色の持つ意味についてまとめてみましょう。
さて、黄緑赤と3色の意味について考えてきましたが、「デザインでの色は人が感じる認知と、そこから来る理解」という点で非常に重要な役割を果たしていることが分かりました。私たちがデザインするときには、「デザインの目的や伝えたいこと」と「適切な色」を結びつけていくことで、デザインを通じた情報伝達がよりスムースになっていくことでしょう。
今回の記事では、一部のデザインのみを切り取った上で、一部の色とデザインの関係のみを考えていきましたが、次回は皆さんに「色とその色の意味」を考えてもらいたいと思いますので、がんばっていきましょう。