自動販売機はデザインの塊である

情報の価値のデザイン

「デザインでは正しい情報や意図を相手に正確に伝えることが必要である」という話をトイレの回でお話しましたが、次にデザインで重要になってくるのは「デザインされた情報に価値があるか」ということであると考えられます。今回はデザインされた情報の価値を駅や学校などいたるところに存在すえう自動販売機から考えていきましょう。

情報は文字を超える

自動販売機で皆さんが買うとき、近くに行って商品を探すことがほとんどだと思います。お茶なのか水なのかジュースなのか私たちは商品パッケージから理解することはできますが、例えばお茶や缶コーヒーはパッケージから温度を知ることは難しいでしょう。そんな時、私たちは商品のまわりに記された情報を読むことで温度を理解します。

とある駅に置かれていた一般的な自動販売機。近くで見るとペットボトルに存在する情報量もさることながら自動販売機には多くの情報が存在することがわかります。

例えば緑茶は温かいものも冷たいものも多く販売しています。自動販売機に温度についての文字情報がなければ、私たちは運試しで温度の違う緑茶を買うことになってしまいます。適切な情報がなければ、私たちは私たちの望む適切な動きを自動販売機(=相手)に求めることはできません。

しかし、この自動販売機には大きな問題があります。それは「日本語が読めない人に対しては情報をどう伝えるか?」という問題です。自動販売機で温かいものと冷たいものが同時に販売されていることは日本では珍しくはないですが、海外の方々にとってはそうではありません。そうなると文字の情報だけでは売られているものの情報が伝わらず、折角の情報は無価値な情報になってしまいます。

とある駅に置かれていた新しいタイプの自動販売機。情報がどのように変わったのかわかりますか?

とある駅に置かれていた新しいタイプの自動販売機です。色は同じですが文字情報が記号化されていることがわかります。炎と雪のマークを利用することで、海外の多くの人たちにも温度を認知させることができています。

情報を記号化し、より多くの人達に正確な情報を伝える流れは欧州のアイソタイプから始まり、日本では1964年東京オリンピックの開催により製作されたピクトグラムによって一気に加速し、この自販機もまた同様に情報の記号化をすることでより多くの人達に正確な情報を伝えるために導入されたものです。

情報の価値というものは「伝える対象」「伝える目的」によって、同じ情報であっても全く異なる形に変化させなければ無価値なものになってしまいます。私たちは情報をデザインする時、「誰に」「どんなことを伝えるか」の2つの点から考える必要があるといえるでしょう。

遠くから眺めるためのデザイン- 色

さて、今までは文字情報に注目していきましたが、少ししか触れていなかった「色」についても触れていきましょう。

自動販売機を見た時、私たちが起こす行動は近くで眺めて決めるだけではありません。

例えばあなたが「少し寒くて温かい飲み物を飲みたい」と言う時。自動販売機を眺め始めるのは遠くからのはずで、小さく見える色に「赤色」があるかを確認すると思います。私たちは色彩デザインによって無意識のうちに商品の情報を認知しており、色と情報は切っても切れない関係にあると言えるでしょう。

逆に言えば色と情報が噛み合わなくなってしまった場合は正確な情報が伝わりにくいとも言えます。

自販機のボタンが様々な色に変化するのは見ていて面白いですが、一方で情報の混乱を招くものでもあると考えられるでしょう。

画像のような例は色と情報が噛み合わなくなってしまった典型例で、冷たい飲み物なのに赤色のボタンが光り、「温かい飲み物なのかもしれない」という困惑を発生させてしまいます。見た目の豊かさはこちらの方が上でも、ボタンの色がつめたい青色になったり、あたたかい赤色になったりしていると、間違えて買ってしまう人も出てきそうですね。

さて、情報と色の関係がなんとなく分かってきたところで、次の回からは街の中にある情報と色の具体例を見てみましょう。

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