ピクトグラムの観察

観察をするにあたって

前回は「ピクトグラムの意味を考えてみる」という記事でした。このことは実際に見ていただいた方が理解が深まりますし、皆さんにはピクトグラムの観察をしてもらいたいと思います。が、ピクトグラムを視点(=テーマ)なしに観察するのは難しいと思います。そこで今回はピクトグラムを見る時に活かせるかもしれない、観察の新しい視点をいくつかご紹介していきたいと思います。

違和感を感じさせない「向き」

私たちは無意識のうちに「向きの決めつけ」を行っています。頭の中で海を泳ぐ魚の絵を思い浮かべて下さい。

皆さんは尾びれと口をどちらの方につけましたか? 多くの人は口を左側に、尾びれを右側に書いたと思います。これと同じようにピクトグラムの情報から受ける情報にも私たちは決めつけを行っています。

左から右へ人が移動していくピクトグラムの例

人が歩く絵を書くと、絵の中の人は左から右へ歩くと無意識に決めつけ、左から右へ歩く人の絵を多くの人が書くように、ピクトグラムでも左から右へ人が動くものだと、無意識に決めつけを行っています。その決めつけの根源には「ピクトグラム以外の文字情報の多くは左から右へ進んでいくから」という理由もあるかもしれません。

しかしその一方で一定数、右から左へ人が移動するピクトグラムが存在していることも事実です。

人の向きが混在するピクトグラムが利用されている例

どうしてこのようにピクトグラムの向きが突然変わるのでしょうか。それは目的の場所の位置や距離が原因なのか、心理的要因が原因なのか。そんなイレギュラーなピクトグラムを観察し、どうして人の動く向きが逆なのかを考えてみると面白いかもしれませんね。

ピクトグラムを用いた情報設計に注目する

ピクトグラムが広く使われるようになった現在でも、依然として文字情報を用いた情報伝達は続いています。

同じ系列の情報に対して、文字情報のみのものとピクトグラムが使われているものが混在している例

例えばこの看板は、列車の行き先を記した情報を基本的に文字情報で表しつつも、海外旅行者が多く利用する空港にだけはピクトグラムを用いていたり、同じ成田空港でも所要時間が短い方は大きく、長い方は小さく表示しています。この看板だけではなく、いろいろな看板でピクトグラムとその周囲の情報を含めた情報設計が行われています。

「デザインの魂は細部に宿る」なんてタイトルの本もありますが、ピクトグラムとその周辺の細かい情報設計の工夫を無意識に見るのではなく、意識的に観察することで、デザインの役割を感じてみるといいかもしれませんね。

ユニークなピクトグラムに注目する

ユニークなピクトグラム「ユニピク」に注目しながら、ピクトグラムの観察を行うのも面白いでしょう。ユニピクはトイレのような全世界共通で使われているピクトグラムではなく、ピクトグラムにオリジナル要素を組み合わせた、他に見ない独特なピクトグラムのことを指します。

ユニピクは全世界共通のピクトグラムと比べると、劣る部分も多くありますが、その一方で「人が情報を正確に伝えるための面白い視点」を見ることもできるデザインを観察するにはもってこいのものです。

羽田空港にある情景が存在するピクトグラム

例えば羽田空港国内線ターミナルにあるピクトグラムは「情景のあるピクトグラム」としてユニークなピクトグラムであると考えられるでしょう。

渋谷駅の工事現場で使われている

渋谷駅の工事現場で使われているピクトグラムには"ハチ公(口)"という情報に対して犬のピクトグラムアイコンを使うことで、情報が氾濫している渋谷駅の中で、目的地への誘導を的確に行えているといえるでしょう。

さて、この「ユニピク」についてはQUESTIONとして皆さんへのお題として、そして皆さんの視点からより理解を深めてほしいと思っています。

次回は久々のQUESTION。あなたの周りのユニピクを探してみましょう。

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