野良デザインの発見
〜「新宿駅の修悦体」〜

デザインはデザイナーだけがするもの?

デザインといえばデザイナーによるプロの仕事だと思われている方も多いと思いますが、実際には多くの人が日頃の暮らしの中でデザインをしています。そんな無意識に誕生する「野良デザイン」について観察してみましょう。

「野良デザイン」の代表例、修悦体

「野良デザイン」の代表例として「修悦体(フォント)」があります。
修悦体は販売されているフォントでもなければ、皆さんのパソコンに入っているフォントでもありません。修悦体はデザイナーではない、当時新宿駅で警備員をしていた佐藤修悦氏によって作り出されていったフォントで、なんとガムテープで作られています。

ガムテープで作られたフォント、というとデザインとは程遠いところにあるような印象を受けてしまいますが、これをデザインだと考える理由は以下のようなものです。

この2つが修悦体をデザインだと考える理由になります。それぞれの理由について考えていきましょう。

2017年ごろに新宿駅に存在した修悦体

背景の問題と問題解決の手段としての「修悦体」

まず修悦体とデザインの関係を理解するため、修悦体が2000年代前半に新宿駅構内の案内からどうして産まれたのかを考えていきましょう。

これがまず修悦体の背景にある問題です。修悦体がデザインと考える所以はこの問題があることを発見した上で、当事者によって問題解決をするための手段として開発されたものであるからです。次は問題解消の内容について見ていきましょう。

新宿駅に存在していたいくつかの問題は修悦体によって解決に導くことに成功しました。修悦体はガムテープでつくられた決して美しいものではありません。まして、ピクトグラムのような多様な言語圏の人たちが理解できるものではありません。しかしながら、修悦体に込められた思いであったり、行動のステップなどは私たちデザイナーがデザインをする際に行うこと(調査 → 思考 → 作成 → 考察)と類似しています。

このことから修悦体はまさに野良デザインの代表例といえるでしょう。

野良デザインを探してみよう

今回は野良デザインの中から修悦体を紹介しましたが、世の中にはこの他にも多くの野良デザインが存在しています。

次回のQUESTIONでは野良デザインの探し方を紹介しつつ、皆さんで野良デザインを探してもらおうと思います。

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