カレー皿で考えるデザイン

デザインを様々な視点から考えてみよう

さて、今回からは「デザインを様々な視点で考える」ということを本格的に始めていこうと思います。

カレーを食べるときの皿、どんな皿ですか?

皆さんはカレーを食べる時、どんな皿を使いますか?

白い皿、青い皿、深い皿、浅い皿、プラスチックの皿、金属の皿、陶器の皿・・・などなど多種多様な形や素材、色の皿でカレーを食べていると思います。電子レンジでチンできる皿、すぐ捨てられる皿、そもそも鍋で食べている、なんて人もいるかもしれませんが、今回はこの中から「皿の深さ」「材質」という面からデザインを考えてみましょう。

皿の深さは、私たちのカレーの食べ方のデザインだ

「皿の深さ」というところから考えていきましょう。

私は浅皿を使ってよく食べています。

私は浅皿を使ってカレーを食べることが多いのですが、それにはこんな理由があります。

私と同じく浅皿を使う方はこんな理由があるのではないでしょうか。こう見ると浅皿は食べる量や片付けの面で非常に効率的に思えますが、だからといって深皿が使いにくいということになるのでしょうか?

そんなことはありません。深皿でカレーを食べる利点にはこんなものがあります。

こう考えてみると、カレーを食べるときの皿の深さはどちらにも良い点があり、どちらがデザイン的に優れているという単純な話ではないことがわかります。カレーの皿の深さのデザインは、私たちの食べ方によって「どちらが良いデザインであるか」というのは変わってきます。

このことから皆さんに理解していただきたいデザインの重要なポイントは、「デザインに正解は存在せず、視点が変わると"良いデザイン"は まったく違ったデザインになる」ということです。

まずはこのポイントについて理解してもらえれば大丈夫なのですが、まだこの話は終わりません。人にとっての"良いデザイン"とは深い皿にしろ浅い皿にしろ、使う人たちにそもそも根付くものでなければなりません。それを考えた時、デザインは背景にある大きなものを考える必要があります。

カレー皿の素材でデザインを考える

"良いデザイン"は使う人たちに根付くデザインでなければなりません。(文化として)デザインを根付くためには、その人たちの持つ文化や環境などバックにあるより大きなものもデザインをするときに考慮する必要があります。今回はカレーの皿の素材からこのことについて考えていきましょう。

カレー皿の素材というと私たちの身近にあるものは陶器皿、プラスチック皿、紙皿、金属皿の4つが考えられます。

多くの家庭や多くの店では、どこでも売られている陶器製のものがよく使われています。洗いやすく、購入しやすい陶器皿は一般家庭で利用しやすい皿といえますが、あえてプラスチック皿や金属皿、まして紙皿を使う理由は無いように感じます。が、実は残りの3つも環境や文化を考えると、こちらのほうが良い場合があります。

安価で割れにくいプラスチック皿は、皿を落として割ってしまう子どもにカレーを食べさせるような、子育ての環境には適していると言えますし、すぐまとめて捨てられる紙皿は、野外キャンプ場のような食器洗い用の水を確保するのが難しかったり面倒な場所でカレーを食べる時に適していると言えます。

インドカレーには金属製の皿が多く用いられます

インドカレーによく用いられている金属皿の場合は環境面に加えて文化面の影響も強いです。

かつて日本やヨーロッパで使われていた金属皿は「安い」「片付けやすい」といった現在の陶器皿のような理由で使われていましたが、カレーの本場であるインドではまた別の理由があり金属皿が使われてきました。

それは宗教的な文化の面です。インドで多数派をしめるヒンドゥー教の人たちには「浄・不浄」という考え方が強くあります。「左手は不浄の手」という話を聞いたことがある方が多いかと思います。

インドでは食べ終わった陶器の食器は「不浄」であると考えられています。彼らは陶器皿は完全に清潔にならないと考え、またある人は陶器の元は土であるから金属より不浄であると考え、陶器皿を繰り返し使う食器に使おうとしません。

一方で金属の皿は宗教上「浄である(汚れない)」とされているために、インドの料理の多くはステンレスの皿で食べられているのです(※ 不浄になってもすぐ捨てられるプラスチック皿や葉っぱを使った皿も地域や人によって利用されます)。

このことから皆さんに理解していただきたいデザインの重要なポイントは、「デザインをする時は、人々の行動の裏側にあるものを探らなければならない」ということです。

私たちからすると、陶器皿あるいはプラスチック皿の使い勝手が一番いいように思えますが、使う人の文化や環境によっては全く違うデザインでないと受け入れられないことが多くあります。

まとめ

今回の記事のまとめをすると、

ということになります。次回以降も「デザインを様々な視点で考える」ということをやっていきたいと思います。がんばっていきましょう!

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